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新型コロナウイルスと診療報酬改定の影響を紐解く(第4回)
新型コロナウイルスの影響を機に、新型コロナ感染拡大防止を目的に、診療および服薬指導における対面原則が時限的に緩和されました。2020年4月10日に厚労省から出された事務連絡ですので「0410事務連絡」と呼ばれています。これまで規制のあったオンラインでの診療や服薬指導の仕組みも大きく変わっていくでしょう。
■オンライン診療「0410事務連絡」の衝撃
パラダイムシフトとは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することをいうのですが、薬局・薬剤師にとって「0410事務連絡」は当にパラダイムシフト的な変革です。米国ではメールオーダー(郵送調剤)が広く浸透しており、メールオーダーとリアル薬局が混在します。幾度か米国の巨大な調剤工場も視察したが、もし同規模の調剤工場が日本に20箇所くらいできたとしたら、7億枚全ての処方箋に対応できることに驚愕し危機感を感じました。勿論米国と日本では医療制度が異なるので、法的に「対面の原則」や「調剤する場所」の規定があるかぎりにおいては、米国と同じようにはならないのですが、Amazonのヘルスケア参入やPillPack買収は、いずれ脅威となると考えていました。
0410事務連絡はオンライン診療の規制緩和に関する通知で、あくまでも時限的・特例的という条件付きですが、医療機関は初診からオンライン(電話を含む)で、診察から処方箋発行、患者にOTC薬の推奨を行うことができるようになります。全国の薬局・薬剤師もオンライン(電話を含む)で服薬指導と郵送での投薬を行うことができます。
0410事務連絡の詳細は割愛しますが、少なくともこれまでの規制のほとんどは緩和され、米国のメールオーダーとほぼ同様の仕組みで郵送調剤が行えることになりました。他業種からの参入の脅威に警戒しなければならないですが、同時に薬局薬剤師は、このオンラインでの服薬指導を積極的に活用し、医師と役割を分担して、医療崩壊の危機に対して立ち向かい貢献すべきであると考えます。
オンライン診療では、外来医療における医師と薬剤師の連携と役割分担がより求められるようになるでしょう。医療機関は、通常の医療に加えて、新たに感染症患者への対応を行うことになりますが、現在の業務のボリュームを変えることなく行うことは難しいのが現状です。
新型コロナ禍でのオンライン診療では、長期間にわたり医師は患者と会えないので、薬剤師は、その期間にも、定期的に患者の状態をヒアリング・把握して、もし課題があれば医師にフィードバックすべきです。勿論、これはかかりつけ薬剤師として当たり前の役割ですが、オンライン診療ではその役割はより重要になります。詳細は厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(平成22年4月30日付)で、現行制度下で薬剤師が実施可能な9業務に薬剤師を積極的に活用することを推奨しています。
薬学生や若い薬剤師が就職先や転職先を選定する際には、オンライン服薬指導に取り組んでいるかも含めて、是非確認してみてください。
以上、2020年の診療報酬改定と新型コロナウイルスへの対応の両面から、薬剤師の仕事の変化と、就活・キャリア形成の留意点を述べてみました。世界は消費活動の急速な縮小により、各企業の売上と雇用は急速に減少しており、雇用維持ための助成金、企業存続のための運転資金の供与などが検討されています。しかしながらこの莫大な財政出動と負債を決して将来の世代へのツケとしてはなりません。今の世代の個人、企業、国・自治体がそれぞれ痛みを分かち合う覚悟を持つことが必要になります。
これまで医療制度は十年単位で少しずつ改革されてきたのであるが、Afterコロナの時代は、全く新しい視点での改革が必要となり、これまでとは異なる時間軸で変革を進めなければなりません。また一旦進んだ規制緩和を完全に元に度戻すことも難しいでしょう。過去の十年単位の流れが一年単位で動いていく時代に変わっていきます。私たちは既に生じつつある新たな現実に対応し、既に変化のモードが変わったことを自覚しなければなりません。決して「見切られる薬剤師」とならないように、事実に基づく最適な選択と弛まない努力を続けて欲しいと願います。