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緊急避妊薬の対面服用の必要性
「10月7日に政府は、性交直後の服用で妊娠を防ぐ緊急避妊薬について、医師の処方箋がなくても薬局で購入できるようにする方針を固めた。」との報道が各紙でにぎわいました。Twitterでは「緊急避妊薬」がトレンド入りしたほどです。
しかし一方で、当然のことながら反対の声も上がりました。10月21日には日本産婦人科医会の木下勝之会長が記者懇談会の会見で、産婦人科医の指導が必要で緊急避妊薬の薬局購入に反対する発言をしたという報道がありました。
緊急避妊薬を薬局で購入できるようにすることに対して、医師側から反対意見が出る理由についてはここでは深く言及しませんが、ネットやSNS上では、中絶ビジネスが奪われることによる反対なのではとさえささやかれています。日本では年間約16万件、1日440件の中絶手術がおこなわれています。手術費用は自費で10~20万円、これに年間の件数を掛け算すればその全体額の大きさはご理解いただけると思います。
産婦人科医の遠見才希子氏、NPO法人ピルコン理事長の染矢明日香氏、#なんでないのプロジェクト代表の福田和子氏が共同代表を務める「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」が10月27日に厚生労働省に10万7,000人分の署名を提出しました。今後の行政、医会、世論の動きから目が離せません。
薬剤師の面前で服用するべきか?
緊急避妊薬の薬局での販売については、当の薬剤師からも様々な声が上がっています。薬剤師側の知識不足やプライバシーの確保などが問題視されていますが、その中で一番の論点になっているのが「面前服用」です。薬局で販売することになった場合、乱用、転売などを回避するために、薬剤師の面前で服用させるべきだという意見です。これは「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の「薬剤師が調剤を行い面前で服用させる」という例外規定が元になっていると考えられます。
“緊急避妊薬を買い求めに来た女性に、薬剤師の目の前で服用させる。”
薬剤師側からすれば大したことのない行為かもしれませんが、女性からすれば乱用や転売の疑いをかけられている気持ちになりますし、万が一のためにストックしておくという購入ができません。
皆さんはどう考えますか?
乱用や転売の心配は緊急避妊薬だけの話か?
面前服用の言い分もわからないわけではありませんが、それを言うなら緊急避妊薬よりも注意を払うべきOTCが他にもあります。それを放置して、緊急避妊薬だけを過保護に取り扱うのは理屈が通りません。
エフェドリン、コデイン、ブロモバレリル尿素を含むOTCがそれです。あまり知られていないかもしれませんが、これらを含むOTCによる依存や乱用が問題となっています。乱用や転売防止のために薬剤師の面前での服用が必要なら、これらのOTCも面前で服用させなければ話の筋が通らないということになってしまいます。
もう少しロジカルに議論してほしいものです。
いずれにしても当事者である女性を置き去りにした議論をしてはいけません。
私たち医療者は常に患者ファースト、顧客ファーストでいたいものです。