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コロナ渦での薬剤師雇用状況について
これまで薬剤師業界は長期にわたる「売り手市場」といわれ、薬剤師免許を持っている薬剤師であれば就職や転職で苦労することは少なかったといえます。しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響で、薬局の売り上げが落ち込み、昨今、薬剤師の雇用環境が急激に悪化しています。
パート薬剤師や派遣薬剤師の雇い止めや求人数の減少など、薬剤師の採用や転職市場においても、今後さらに状況が悪化していくことが予想されるでしょう。正社員はかろうじて雇用は維持されるものの、非正規雇用であるパート薬剤師や派遣薬剤師は雇用維持がますます困難になることが予想されます。
ここでコロナ渦での薬剤師の雇用状況に関しての統計データを取り上げてみます。
有効求人倍率の推移
有効求人倍率とは、企業からの求人数(有効求人数)を、公共職業安定所(ハローワーク)に登録している求職者(有効求職者数)で割った値のことで、雇用状況から景気を知るための統計資料の一つです。つまり有効求人倍率は、求職者1人に対して、何人分の求人があったかを示すものです。
厚労省の「一般職業紹介状況」の統計データによると薬剤師の有効求人倍率は以下のように推移していることが伺えます。
※統計では職業の括りが「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」となっているため、薬剤師のみに限ったデータではありませんが、 薬剤師の有効求人倍率の推移を捉えるデータとして見るものとします。
約7年前の2013年の有効求人倍率は7倍近くあり、求職者1人に対して、7人分の求人があるという「超売り手市場」といえます。2019年には約3.7倍となり、年々下落はしてきたものの他業界に比べて「売り手市場」の傾向といえます。では、コロナ渦の2020年の有効求人倍率はどうなったのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、薬剤師をとりまく医療業界は、大きな影響を受けています。患者の外出抑制や受診控えの影響により、処方箋枚数は大きく減少しているのが実情です。2020年5月25日に発出された緊急事態宣言が解除されたあとにおいても、処方箋枚数が回復していない薬局も少なくありません。
経営に大きな打撃を受けている薬局は雇用を見直さなければいけない状況に直面しています。
2020年10月には有効求人倍率は2倍を切る数字となっており、かつての「売り手市場」から「買い手市場」に変遷しつつあるでしょう。
これまでは薬剤師免許があれば就職・転職できるという「薬剤師が求人企業を選ぶ時代」でしたが、今後は「求人企業が薬剤師を選ぶ時代」になるといえます。薬剤師は「選ばれる人財」でないと生き残っていけないと考えても大げさではないでしょう。そして、これから薬剤師を目指す学生も「エンプロイアビリティ(雇用される能力)」を高めてほしいと思います。
最後に余談ですが、「求人企業が薬剤師を選ぶ時代」、そして「薬剤師が求人企業に選ばれる時代」に着目した薬学生のダイレクトリクルーティング「Agonist」(アゴニスト)が今年12月にリリースされました。「Agonist」は薬学生が自分のプロフィールをサイトに登録し、そのプロフィールを見た求人企業が薬学生にオファーするというオファー型就活サイトです。転職や就職においてもダイレクトリクルーティングサービスは存在しますが、薬学生に特化したものは業界初。求人企業や薬学生もこのようなサービスを活用し、共に生き残る道を模索してほしいものです。
薬学生のオファー型就活サイト「Agonist」
https://agonist.jp/