MEDITAIL NEWSメディテール ニュース

薬科大学の国家試験合格率のカラクリ

新年度になり、4月からたくさんの新入生・新社会人が新しい生活に向けてスタートしています。例年では4月になると初々しい新入生やスーツに着慣れていない新社会人を街中で目にすることで年度替わりを感じていましたが、新型コロナウイルスの影響で入学式・入社式が中止になったり、オンライン授業やテレワークになったりしたことで今年は目にする機会が少なくかったように思えます。新入生や新社会人は不安を抱えながらの門出となりましたが、この逆境を乗り越えて逞しく生活してほしいですね。

 

さて、薬剤師業界においては第106回薬剤師国家試験を終え、9634名の方が合格しました。合格率は68,66%と例年並みの合格率となりました。大学別の合格率について下記リンクをご参照ください。

 

※引用 「厚生労働省 第106回薬剤師国家試験 大学別合格者数」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/sankou3.pdf

 

 

ここでは私立薬学部56大学のうち、第106回薬剤師国家試験の合格率上位5校と下位5校について取り上げてみます。なお、厚労省の合格者数のデータに加え、大学の偏差値、入学者数、進級率も合わせてみていきたいと思います。

 

 

 

 

※偏差値データに関しては、東進ハイスクール、河合塾、ベネッセの3社の平均値で表示しています。
※入学者数・進級率等のデータは「厚生労働省 2020年(令和2年)度の入学試験・6年制学科生の修学状況」より引用しています。

 

 

1つの大学を例にデータを見ていきましょう。医療創生大学は新卒合格率100%であり、これから薬学部進学を考えている高校生や保護者からすると「この大学に入学すれば国家試験に合格しやすい」という先入観が働くことが想定されます。ただ、2015年の入学者96名に対し留年せずストレートで2019年に5年生になった数は31名であり、約7割の学生は留年しているということになります。また一度も留年せずに国家試験に合格した割合は44.79%とストレートで合格する割合は半分にも満たないことが分かります。

 

 

今回お伝えしたかったのは、厚労省から公表されている合格率だけを鵜呑みにしてはいけないということです。入学者に対して何名合格しているのかや進級率についても目を向けてほしいと思います。薬科大学は6年間通うことが必須で、私立の学費としても1000万円以上かかります。留年や退学する方も少なくありません。薬科大学に入ったからといって薬剤師に必ずなれるというものではありませんので、学生や保護者の方にはしっかり今後のキャリアや進学について考えてほしいですね。

 

 

余談ですが、先日日本FP協会より「小学生の将来なりたい職業ランキング」が公表されていました。

 

引用:「出典:日本FP協会 小学生『将来なりたい職業』ランキングより」

 

女子児童のなりたい職業の1位が「薬剤師」のようです。薬剤師業界に関わっている身としては、薬剤師業界の現状と世間のイメージにギャップがあることを感じます。ギャップの内容については明言を控えますが、世間からは薬剤師は「安定して稼げる」というイメージがあるのかもしれませんね・・・。

 

薬剤師として働くことが世間のイメージと乖離がないよう、ますます薬剤師の活躍が求められます。