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薬剤師によるワクチン接種

新型コロナウイルス感染拡大の歯止めが効かないなか、頼みの綱ともいえるのが「ワクチン接種」。ワクチンの接種率を世界と比較すると、日本の接種率は著しく低いのが現状です。

 

5/26付の世界のワクチン接種状況のデータによると、日本のワクチン接種率は顕著に低いといえます。

 

 

欧州や欧米に比べ、アジア圏のワクチン接種率が顕著に低いことがうかがえます。各国のワクチンの調達状況が接種率に大きく影響を与えている側面がありますが、一方ワクチン接種の打ち手の違いも影響しています。

 

新型コロナウイルスワクチンの接種が進むアメリカでは、2021年4月19日より16歳以上のすべての人が接種対象となり、21日までに人口の約4割、成人の約52%が少なくても1回の接種を完了したと発表されてます。ドラッグストアでも予約をすれば、待ち時間なく気軽かつスムーズにワクチン接種を受けることができます。トレーニングを受けた薬剤師や薬学生による接種もおこなわれているそうです。こうした背景もあり、接種回数が世界最多の1億6000万回以上に達しています。

 

一方、日本では医師および看護師に限られていることもあり、ワクチンの接種率が6%にも満たないといった世界と比較すると「コロナワクチン後進国」と言われる所以も納得がいきます。

 


 

日本では薬剤師も打ち手の対象になる?

 

政府が目標とするワクチン「1日100万回接種」の実現に向け、打ち手の確保が課題になるなか、河野太郎規制改革相は5月18日の閣議後の記者会見で「薬剤師も次の検討対象にはなる」と発言。翌19日には、加藤勝信官房長官も会見で「薬剤師を含め、あらゆる選択肢を排除しないという観点で、厚生労働省で検討が逐次なされている」と述べました。

 

ワクチンなどの予防接種は医科の医療行為に当たり、医師法ならびに保健師助産師看護師法により、医師は自ら実施でき、看護師は医師の指示のもとで実施することが認められています。現行法上はその2職種に限られるが、新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、接種に携わる医療従事者が不足していることを背景に、厚労省は2021年4月末、歯科医師による接種を特例として認めました。

 

歯科医師は法律上、ワクチン注射をできませんが、

(1)歯科医師の協力なしでは集団接種が困難

(2)歯科医師が筋肉注射を経験しているか、必要な研修を受けている

(3)被接種者が同意している

という条件を満たせば、「違法性が阻却され得る」と整理したのです。

歯科医師の場合、歯科の医療行為にかかわる注射は法律上認められていますのでワクチン注射も特例で認められたのでしょう。

 

一方、薬剤師のワクチン接種に対しては反対する声もあるようです。薬剤師の業務は現行法上、「調剤」とされていて、医療行為に該当するものは原則認められていません。したがって、注射の経験はなく、卒前の薬学教育でも一部シミュレータを相手に行う実習がある程度でアナフィラキシーショックなどに対応できる救急患者の診察や処置を実践的に学ぶ機会もごく限られているという理由からです。

 

米国やカナダなどでは以前から薬局でインフルエンザなどの予防接種を行っていました。そうした国だけでなく、他国も続々と薬局薬剤師がワクチン接種を実施できるように、法改正や研修を実施しています。

 

日本は法改正や研修、薬学教育の遅れなどを理由に薬剤師のワクチン接種が解禁されるのはまだまだ先の話になりそうですね。そうした後手後手の対応がワクチン接種率の低さとしてツケが回っているように思えます。古い慣習や潜在意識に捉われて、柔軟な発想が活かされないのが日本なのでしょうか。新型コロナをきっかけに、今後起こりうる有事に迅速かつ臨機応変に対応できる国になることを願うばかりです。