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薬の自動販売機がスタート
OTC医薬品の大手企業である大正製薬は、東京・JR新宿駅構内にOTC医薬品の自動販売機を設置し、自販機による販売を5月末から開始しました。取り扱っているのは、第2類医薬品、第3類医薬品、医薬部外品に分類される大正製薬のOTC医薬品のうち、比較的に緊急性のある風邪薬「パブロン」、解熱鎮痛薬「ナロン」、鼻炎治療薬「クラリチン」など約30品目を販売しているようです。
日本国内では、第3類医薬品以上の大衆薬を扱う自販機今回が国内初となります。大正製薬は、5月末から8月末まで自販機を設置し、実証実験をおこなうことによって商品ニーズや改善点を検証していくようです。
OTC医薬品はすでにインターネット販売が行われていますが、気軽に購入できる半面、手元に届くまでのタイムラグがあります。一方、実店舗販売では資格者(薬剤師または登録販売者)の人材確保難という課題があり、販売に対応できる店舗の広がりに限界があります。自販機はその両方の課題を克服する販売チャンネルとなり得ると大正製薬は判断したようです。
自動販売機の利用方法としては以下の流れとなります。
1.OTC販売機のタッチパネルで本実証への参加に同意
2.購入する商品を選択(商品から選ぶ、または、症状から選ぶ)
3.選択した商品の効能や用法・用量、注意事項を確認
4.店舗にいる薬剤師または登録販売者が内容を確認し、販売を許可
5.OTC販売機で決済(交通系ICカードのみ)し、商品を取出す
この自動販売機は実証中ということもあり、現在では
・午前10時~午後6時の日中の限られた時間帯での稼働となること
・薬剤師または登録販売者が許可をしたうえで販売となる
という制約での運用のようですが、実証をクリアしていくことでより利便性かつ安全性と追求したモデルを現実化できる可能性があります。
昨今、市販薬においては特に若者の間で風邪薬などの市販薬を大量服用し多幸感を得る行為(=オーバードーズ)が問題となっています。コロナ渦で人との繋がりが希薄になりがちとなり、ストレスや不安を解消し多幸感を得る手段として市販薬を過剰摂取するというのは、本来の薬の使用目的からは大きく外れています。このような薬の自動販売機は販売場所や時間に縛られず手軽に薬を手に入れることができる利便性は上がるものの、オーバードーズを加速させてしまうというリスクはあります。今回の実証実験では薬剤師または登録販売者が許可をしたうえで販売するという制限によってオーバードーズを防ぐという効果は高いかと思いますが、運用面での改善はより必要となっていくでしょう。
このようにIoTと医療が融合することで利便性向上とそれに伴う安全性のリスクは課題になります。これらの課題をクリアしていくことでOTC医薬品を適切な方に安心に利用してもらえることを期待しています。