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薬剤師へのカスハラについて考える

 

調剤薬局やドラッグストアの薬剤師が相手からのカスハラ(カスタマーハラスメント)やストーカーの被害を受けるケースが増えてきています。昨今、インターネットやSNS等を使って個人を特定しやすくなったことを背景に、一部の心無いクレーマーやストーカーが薬剤師の名札にあるフルネームから個人が特定され、実名でクレームをネット公開されたり自宅まで付け回されたりするといった被害も少なくありません。その結果、薬剤師が心身の不調からから配置転換の希望や休職するケースもあります。

 

このようなケースを受け、厚生労働省は、ストーカー被害やカスタマーハラスメント防止等の観点から、薬局やドラッグストアに勤務する薬剤師や登録販売者の名札について氏名記載方法を見直し、2022年6月27日付で都道府県に通知を発出したしました。

※参考:厚生労働省『「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」の一部改正について』

 

これまで薬局や店舗販売業に従事する薬剤師や登録販売者、一般従事者の名札には氏名を記載することとしていたが、今回の改正では、氏名に変わって「姓のみ」「氏名以外の呼称」を記載した名札を付けることを認めても差し支えないとしました。

 

名札にフルネームを記載することについてはメリット・デメリットがあり、名札の記載については会社や店舗の判断になるかと思います。もちろん名札をフルネーム以外にすることによって、ストーカー被害やカスタマーハラスメントの防止の一助になるかもしれません。ただ、フルネームを伏せたからといってこのような問題が解消されるわけではありません。相手が薬剤師のことを執拗に調べたり、待ち伏せをしてストーカーされるといったことも十分に考えられます。会社や店舗として薬剤師を守り安心して働けるように対策を打つことが大事です。

 

日本では古くから「お客様第一主義」が根付いており、サービス業である薬局にとってもお客様のほうが立場は上であることが染みついているのかもしれません。だからといって顧客からの理不尽なクレームやストーカーなどに屈することなく、会社や店舗として顧客に毅然な態度を取るということも必要なのではないでしょうか。会社や店舗の対応によってはネットで叩かれるリスクもありますが、そのリスクを最小限に抑えながら対応することで薬剤師を守ることができます。

 

このようなカスハラは薬局業界に限ったものではなく、顧客を相手とする業界であれば発生しうる問題です。名札にフルネームを記載しないことについてはカスハラ対策の1つの手段に過ぎません。会社や店舗としてカスハラ対策を講じ、従業員である薬剤師が安心して働いていけるような環境を構築してほしいと願っています。