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病院薬剤師は不足している!?

 

 

日本で以前から続いていた薬剤師不足も今では供給が需要を上回るようになり、近い将来は「薬剤師供給過多」になると言われています。特に調剤薬局では顕著に薬剤師求人数が減っているように感じます。調剤薬局では都市部に薬剤師が集中し、地方部ではまだまだ薬剤師が不足しているというところも少なくありません。病院の薬剤師はどうでしょうか。病院も調剤薬局と同様に地方部の薬剤師が不足しているのが現状です。

 

2022年8月に開催された厚労省の「第8次医療計画等に関する検討会」では病院薬剤師の確保についても議論されました。病院薬剤師の不足問題が提起され、次期医療計画の作成指針に薬剤師確保を明確に記載することになったようです。

 

厚労省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」の調査結果では、以下の3つのようなことが明らかになりました。

 

①薬剤師が不足している」との回答は、薬局でも4割強あるが、病院では64.8%に上る
②病院では「病床規模が大きい」ほど、薬局では「処方箋応需枚数が多い」ほど、薬剤師の不足感が強い
③薬剤師が偏在(地域偏在・施設偏在)してしまう要因に、少なくとも20~30代では、病院のほうが薬局より給与水準が低いと推測されること

 

また検討会では「主に薬局と病院との給与格差が、病院薬剤師不足を招いている」と指摘され、その原因の一つに、薬剤師養成課程が「6年間」に延長されたことなどを背景に、「1000万円を超える奨学金返済債務を抱える薬学生」が少なくない。また、20歳代・30歳代では「病院よりも薬局の方が、給与が高い」と推測され、「給与の高い薬局を選択する」薬学生がどうしても多くなってしまうようだ。

 

果たして学生が病院よりも薬局を選んでしまうのは給与だけの問題なのだろうか?

以前、薬局に就職した若手薬剤師に「なぜ病院薬剤師を選ばなかったのか?」というインタビューをしたことがあるが、下記のような回答が得られた。

 

(例)

・病院の就職活動は薬局に比べて選考時期が遅いので、早く決まる薬局のほうがいい

・病院の選考は併願できない

・帰省先で募集している病院の求人情報が得られない

・病院薬剤師は雰囲気が固く上下関係が厳しいイメージがある

 

これらはあくまで薬学生回答の一例だが、薬学生にとって病院薬剤師を志すには

・就職活動におけるハードルが高い

・学生に病院薬剤師の求人情報が届きづらい

・病院で働くイメージがしづらい

といった、主に採用する病院側の問題といえるでしょう。また学生が病院に対してマイナスな先入観を持ってしまうのは大学教育にも改善するべきところがあるといえます。

 

地方部の病院薬剤師不足を解消するためには、決して病院側の努力だけで解決する問題とはいえません。産官学が連携し、複雑に絡み合った問題・原因を抜本的な対策を講じる必要があるといえます。薬局・病院の需要供給のバランスが適正化し、地域偏在を解消していくことが地域医療を支える糸口になるでしょう。